基本契約と個別契約について
ある程度の規模のある取引であったり、反復継続して商品購入取引などを行うとき、基本契約を締結したうえで、個別契約を締結するケースがあります。
このとき、基本契約では、取引の基本的な事項が定められます。項目としては、
- 契約の目的
- 基本契約の適用範囲
- 基本契約、個別契約との関係
- 売買代金、報酬等の支払い
- 検査
- 納品・引渡し
- 危険負担
- 契約不適合責任
- 製造物責任
- 知的財産権の帰属
- 第三者の権利侵害
- 秘密保持義務
- 契約の解約、解除
- 損害賠償
- 不可抗力条項
- 反社排除条項
- 存続条項
- 合意管轄
- 準拠法
等が多いと思います。
この中で、「個別契約との関係」について述べると、個別契約では、基本契約で定めていない事項、例えば、個々の発注、数量、仕様、期限などを定めるケースがあります。
このときに注意が必要なこととしては、基本契約と個別契約で相矛盾する条項があるときに、どちらが優先するのかというルールです。
よく実務上あるのは、個別契約が優先すると定めていますが、この場合、せっかく基本契約で有利な条項を付すことができても、個別契約でひっくり返されるなどのおそれがあります。
したがって、基本契約と個別契約の優先関係について、どのようなルールにしておくのか、今後のことも考え、定めておくことが必要になります。
完全合意条項とは
契約書を取り交わすときに、完全合意条項という言葉を見たり聞いたりすることはあるでしょうか。企業間の契約で最近よく見るようになりましたので、法的にどういう効果があるか説明をしたいと思います。
完全合意条項とは、契約当事者間の合意内容を、契約書に書いてある内容だけに限定する条項です。
契約交渉をしていると、契約書には記載はないけれど、口頭で取扱いや対応を合意するケースがよくあります。暗黙の了解とか、慣例とか、メールなどで確認したなどです。
しかし、完全合意条項がある場合、最終的に締結した契約書の記載内容をもって合意が成立となりますので、契約書に書かれていない事項は合意の対象外になることに注意が必要です。
すなわち、契約交渉段階で作成した覚書、確認書、議事録、受発注書などは、契約書において、その取扱いなどを明記していないと合意対象外ということになります。
完全合意条項は当たり前の条項のように一見思いますが、正しく理解をしていないと、思わぬトラブルになってしまいます。一方で、合意対象が契約書記載事項と限定されることで、契約内容について、誤解などを避けられるメリットもあります。
取引の種類、経緯、内容等に応じて、完全合意条項について、使用してほしいと思います。
(田鍋/編集 中路)
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