下請法が適用される範囲とは?
下請代金支払遅延等防止法、いわゆる下請法は親事業者と下請事業者との間で
①資本金区分、②取引内容の2つの観点で適用の判断が区分されます。
下請法の適用対象となる場合、当事者の合意により適用除外にすることはできない行政取締規定です。
さて、下請法違反については、公正取引委員会が定期的な調査を実施し、調査結果を公表しています。
最近の公表結果によっても、
- 3条書面交付義務違反
- 下請代金の減額
- 下請代金の支払遅延
- 買いたたき
などの違反事例が多く公表されています。
下請法が適用される下請取引では、同法3条の定める書面(3条書面)が作成交付されないと、法令違反となるうえ、実体規定の違反の有無も3条書面の内容に照らして判断されます。
下請法の適用される下請取引を行っている親事業者は、法令違反状態が無いように、確認をすることが求められます。
下請取引で親事業者が留意すべきことは?
日本では、下請取引が多く存在し、特定の親事業者に依存しているケースが多くあります。下請取引では、下請法に注意することが必要となります。
では、下請法では、どのような規制があるかご存知ですか?
例えば、親事業者が下請事業者に、電話で取引注文をして,納品や役務を受けることは問題ないでしょうか?これは、下請法3条に抵触します。下請法3条では、親事業者が、緊急やむを得ない事情により電話で注文内容を伝えた場合でも、電話連絡後直ちに3条書面を交付しなければならないとされています。
そのため、電話のみによる発注は,下請法3条の書面交付義務違反となります。また、この3条書面には記載しなければならない事項が法令で定められています。
もしあなたが親事業者の立場である場合、口頭だけであったり、法令の記載事項を満たさない書面で発注をしていないでしょうか?下請法の規定に抵触すると、それ自体で違法となります。下請法を知らない事業者の方は、一度ご相談下さい。
公正取引の確保
ウクライナ情勢や円安等の影響により、エネルギー価格や原材料費が高騰しています。
こうした状況について、公正取引委員会は、下請法に違反した取引をしないよう注意啓発を行っています。
中小企業・小規模事業者は、外敵影響を受けやすいため、親事業者はその立場に乗じて、下請法に違反する取引を行わないことが必要です。
具体的には、以下の通りです。
- 労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を取引価格に反映しない取引は、下請法上の「買いたたき」に該当するおそれがあることを明確化。
- 下請事業者が匿名で、買いたたきなどの違反行為が疑われる親事業者に関する情報を提供できるフォームとして、「違反行為情報提供フォーム」を設置。
- 下請法違反行為の再発防止が不十分な事業者に対し、指導を行う際に、取締役会決議を経た上での改善報告書の提出を求めていくことを公表。
- 下請法上の重点立入業種として4業種(道路貨物運送業、金属製品製造業、生産用機械器具製造業及び輸送用機械器具製造業)を選定。
などがあります。
詳細は、http://mm.shojihomu.co.jp/c/bSbUaesjyx74m4ag
こちらから確認することが出来ます。
取引環境は厳しい状況にありますが、下請事業者に対し違法な取引とならないよう、留意してほしいと思います。
下請法違反に問われる場合とは
独禁法や下請法に違反しませんか?こういう相談が最近多くなっています。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/shitaukejiken/index.html
こちらのホームページから確認できます。
いずれも勧告事案は下請代金の減額です。多い違反類型ですね。
さて、下請法違反事件の場合、下請け取引の適正化と下請事業者の保護の観点から、すべての事案で勧告されるものではなく、親事業者が下請法違反行為を改善しない場合に勧告されるため、実際の違反件数は相当数となります。
公取委によれば、令和3年度の指導件数は7922件。令和3年度においては、下請事業者が被った不利益について、親事業者187名から、下請事業者5,625名に対し、下請代金の減額分の返還等、総額5億5995万円相当の原状回復が行われたとのことです。
このように下請法違反事案は数多く発生しており、親事業者は、どのような取引の、どのような対応が、下請法に違反するか、きちんと確認されることが、必要と思います。
もし下請法がどのような行為を禁止しているのか、分からない場合には、一度ご相談いただければと思います。
(田鍋/編集 中路)
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